セブスト Fan Fun Festa

スマホゲーム「セブンズストーリー」とその運営への愛がみなぎる二次創作ショートストーリー

続・王都の魔怪盗 〜裏切りのアネーロ〜

プロローグ

今夜、パルサーモ大公妃の真実の魔眼を頂きに参上する

             〜怪盗バーゼル〜 

王都の有力貴族にそんな予告状が届き、リーゼロッテとオーガストが屋敷に招かれていた。

 

リーゼロッテ:豪華なお屋敷ですね

オーガスト:パルサーモ大公妃。王国の立志伝中の人物だからな

リーゼロッテ:王国に来て10年、商人として大成した女性が大公と結婚、ですもんね

オーガスト:結婚直後に大公が病死。今やその夫人が国土の15%を領地とする大公爵様だ

リーゼロッテ:この回廊に飾られた数々の調度品。これだけですごい価値ですよね

オーガスト:オレは調度品より女の子だな。さすがに大公家のメイドはレベルが高いぜ。そこの彼女! 君みたいな子にあえるなんて、今日のオレはツイてるなぁ

メイド:あ、あの…仕事中だから困ります……

オーガスト:出会いはいつも唐突さ、二人の気持ちを引き裂くことは誰にもできない

リーゼロッテ:(オーガストの耳を思いきり引っ張る)

オーガスト:いて、いてて、何すんだよ、リーゼロッテちゃん、オレの耳がとれちゃうから

 

そこに現れるもうひとりのバウンティハンター

 

アネーロ:相変わらず仲がいいのね

オーガスト:アネーロ!? なんでお前がここに?

アネーロ:私はパルサーモ大公妃に護衛として雇われたのよ。さあ、こちらへ。大公妃がお待ちよ

 

 

パルサーモ大公妃

アネーロに促されて大公妃の謁見室に通される二人。

 

パルサーモ大公妃:久しぶりじゃな。オーガスト

リーゼロッテ:二人はお知り合いなんですか!?

オーガスト:昔にちょっとな……

パルサーモ大公妃:ちょっとなんて。私はあの夜のことを忘れたことはないぞ

リーゼロッテ:よ、よ、よ……夜ですか!?

パルサーモ大公妃:せっかく私がすべてを捨てる覚悟を決めて、深夜の高台緑地公園でお前を待っていたというのに……

リーゼロッテ:お……お二人は一体どういう関係で……

オーガスト:あんまりリーゼロッテをからかわないでくれよ

パルサーモ大公妃:ふふふ。まあ冗談はこれぐらいにして、仕事の話をするかのう

 

大公妃から語られる予告状の内容、そして、真実の魔眼はこの屋敷の最深部の宝物庫に厳重な警備に守られていることが告げられる。

 

リーゼロッテ:一つ質問をよろしいでしょうか?

パルサーモ大公妃:なんじゃ?

リーゼロッテ:なぜ王立宝物館にあった真実の魔眼がこの屋敷に?

パルサーモ大公妃:ああ、そのことか……。私が国から買い取ったんじゃ!

オーガスト:買い取った!?

パルサーモ大公妃:最近の王国は軍備拡張のために資金不足でのう。そこで私が支援を申し出たというわけじゃ

全員:(おそろしい人……)

パルサーモ大公妃:でも真実の魔眼には、変な虫がついてきての。おぬしらには、その虫を退治してほしいのじゃよ

 

奪われた魔眼

その夜。パルサーモ大公妃の屋敷の宝物庫。

部屋に扉は一つしかなく、真実の魔眼は、大公家の兵士たちに守られ、部屋の中央のガラスケースに飾られている

 

パルサーモ大公妃:この部屋の兵士達は、大公家に長く使える腹心達じゃ

リーゼロッテ:ここまで厳重な警備の中、本当に怪盗バーゼルはやってくるんでしょうか?

 

次の瞬間、屋敷の明かりが一斉に消える。

 

兵士:どうした?

怪盗バーゼル:フハハハハハハ

リーゼロッテ:その声は!

怪盗バーゼル:真実の魔眼はいただいた! 諸君、また会おう

兵士:はやく明かりをつけろ!!

 

部屋に明かりが灯ると、そこに怪盗バーゼルの姿はなく、中央のガラスケースから真実の魔眼が消えていた。

 

リーゼロッテ:魔眼が……

オーガスト:一体どうなってんだ…

 

 

リーゼロッテの推理

パルサーモ公爵夫人:バーゼルはどうやって真実の魔眼を盗んだのかしら……

オーガスト:扉は開かれてねえ……。誰もこの部屋から出入りしていないはずだ

 

そこに進み出る名探偵。

 

リーゼロッテ:今回の事件には3つの謎があります。まず一つ目は真実の魔眼を盗んだのは誰かということ。

オーガスト:それが一番大事じゃねえのか?

リーゼロッテ:それは難しい問題ではありません。

パルサーモ大公妃:あとの2つはなんじゃ?

リーゼロッテ:犯人はなぜそんなことをする必要があるのか、そして、暗闇で全てを見ていたはずの人が、なぜ何も言わないのかということ。

オーガスト:どういうことだ?

 

リーゼロッテは銃を取り出すと、まっすぐにパルサーモ大公妃に狙いを定める

 

リーゼロッテ:あなたが犯人ですね、パルサーモ大公妃。いや、怪盗バーゼル

オーガスト:リーゼロッテちゃん、そりゃあないぜ。大公妃は本人しか知らない5年前の夜の話を……

リーゼロッテ:あの話本当だったんですか!?

オーガスト:ま、まあ色々と事情がな……

リーゼロッテ:でも、それが盲点だったんですよ。バーゼルは10年前にこの国に商人として来た時から、本物のパルサーモ大公妃自身だったんです。

オーガスト:まさか……

リーゼロッテ:そう。パルサーモ大公妃はバーゼルの人間界での別の姿だったんです

 

それを聞いた大公妃は満面の笑みを浮かべる

 

パルサーモ大公妃(バーゼル):リーゼロッテ、やはりお前は私が見込んだ通りの名探偵じゃ

オーガスト:大公妃自身が作った屋敷なら、魔眼が消えたトリックも仕込み放題ってことか……

リーゼロッテ:でも、本当に不思議なのは、なぜあなたがこんなに手の混んだ芝居をうつ必要があったのかということです。もしかしてあなたは……いや、あなた達は……

 

その瞬間、大公妃は魔族である怪盗バーゼルの姿に変化し、リーゼロッテに向かって魔法を放った。

リーゼロッテは術を受けて倒れる。

 

オーガスト:睡眠の魔法か!

バーゼル:勘が良すぎるのも良し悪しだな

リーゼロッテ:オーガスト……、アネーロに気を付けて……

 

リーゼロッテに駆け寄ろうとするオーガストの足元に、アネーロが弾丸を放つ!

 

アネーロ:そこを動かないで

オーガスト:一体なんのつもりだ!

アネーロ:言ったでしょう。今回の私の仕事は大公妃の護衛よ

オーガスト:アネーロ、てめえ魔族の側に付くってのか

 

怪盗バーゼルはリーゼロッテを抱き上げ、煙幕を放つ。

銃を構えるオーガストを、アネーロの放った弾丸がかすめる。

 

オーガスト:くっ……。これはアネーロの「暗銃」……

アネーロ:この暗闇の中で私達を追いかけることはできないでしょう?

オーダスト:てめえら、リーゼロッテをどうするつもりだ!

バーゼル:この娘を返してほしければ、地下回廊に来い。ただし、この部屋を生きて出られたらの話だがな

 

部屋にいた大公妃の兵士達がアンデッドに姿を変え、オーガストに襲いかかる。

 

 

地下回廊の罠

オーガストはアンデッドを倒し、バーゼルたちが逃げた地下に続く秘密階段を下る。
そこから長い地下回廊が続いていた。

 

オーガスト:(王都の地下にこんな場所があるとは)

オーガスト:(あの広間から明かりが…)

 

オーガストが銃を構え部屋の中を伺うと、マモノに囲まれ磔台に捕らえられたリーゼロッテの姿が見える。

 

オーガスト:てめえら、リーゼロッテに何をしている! これで決まりだ!!

 

オーガストの放ったバーニングキャリバーが、マモノの群れを一掃する。

オーガストは銃で磔台の戒めを破壊するとと、倒れ掛かってきたリーゼロッテを抱き留めた。

 

オーガスト:リーゼロッテ!大丈夫か!!

リーゼロッテ:こ、怖かった……

 

リーゼロッテが強くオーガストを抱き寄せる。
オーガストはリーゼロッテの頭を優しく撫でる。

 

オーガスト:落ち着け、リーゼロッテ

リーゼロッテ:オーガスト、あなたになら私……

オーガスト:り、リーゼロッテちゃん?!

 

リーゼロッテはオーガストに口づけをして、オーガストの手から銃を取ると、その手を自分の胸に導く

 

リーゼロッテ:ねえ、オーガスト……

オーガスト:!!

 

オーガストは身体を離して後方に飛び退く。

 

オーガスト:てめえ、一体何者だ!

リーゼロッテ(偽):あら、気づいちゃったの? ここで私と楽しく過ごしていればいいのに

 

リーゼロッテは魔族に姿を変えると、広間の影から多くのアンデットが姿を現す。

 

魔族:銃を奪われたあなたが、どこまで戦えるのかしら?

オーガスト:お前ら、俺を怒らせたようだな

 

アンデットがナイフを構えて斬りかかると、素早く体を返したオーガストがその腕からナイフを奪い、斬り返す。
そして、逆から切り掛かったアンデッドのナイフを蹴りで弾くと、空中に舞うナイフを掴み、逆手に持った二本のナイフでアンデッドを切り裂く。

 

魔族:その技は、双剣使いの乱れ斬り……

オーガスト:この得物じゃ、手加減はできないぜ。さあ、リーゼロッテをどこにやったか教えてもらうか

 

地下回廊最深部

アンデッドを倒し、地下回廊の最深部に到達したオーガストが見たのは、巨大な像の前で佇むリーゼロッテとアネーロ、そしてパルサーモ大公妃の姿だった。

 

オーガスト:リーゼロッテ!

アネーロ:予想以上に早かったわね。賭けは私の勝ちのようですね、大公妃。

パルサーモ大公妃:あらあら。わしの知っているオーガストなら、あの罠を抜けられるとは思えなかったのじゃが……

オーガスト:お前ら、何を言ってやがる!

リーゼロッテ:オーガストさん、ちょっと静かにしていてください

 

リーゼロッテは真剣な表情で、像の前で複雑な記号の刻まれた石版に向かいあっている

 

リーゼロッテ:これがこうなって、こうだから……

オーガスト:一体これは……

 

リーゼロッテは複雑なパズルのような記号が刻まれた石版をに目を走らせている。

 

アネーロ:リーゼロッテは仕事中だから私から話すわ

オーガスト:なんだか頭が全然ついてこないんだが……

アネーロ:目の前に見えるのが、魔族が復活させようとしている古代兵器フェアゲングよ

オーガスト:フェアゲング……一体なんだそりゃ

パルサーモ大公妃:旧世界を7日間で滅ぼしたと言われる巨大兵器の一体じゃよ

オーガスト:なんでそんなもんがこの王都の地下に……

パルサーモ大公妃:それは私にもわからん。でも、これに目をつけた魔族は、これを復活させて王都を壊滅させようとしている。私は魔族の命でこの巨大兵器を動かすための鍵になる宝石を探してきたのじゃ

オーガスト:まさか、それが……

パルサーモ大公妃:そう、真実の魔眼だよ

オーガスト:じゃあ、既にそれは手に入ったってことは、お前たちの目的は達成したんだろう?

パルサーモ大公妃:魔族も一枚岩ではないということよ。あの人が愛した、この美しい都を破壊し、人々を殺し、そんなことに一体何の意味があるというんじゃ?

アネーロ:私は、そんな大公妃に頼まれて今回の依頼を受けることにしたの

オーガスト:じゃあ、俺たちを館に誘ったのはなぜだ?

アネーロ:あなたじゃないわ。あの娘、リーゼロッテよ。

パルサーモ大公妃:フェアゲングを真実の魔眼で復活させる。ただし、その一部に弱点を埋め込むのじゃ

オーガスト:そんなことができるのか?

パルサーモ大公妃:リーゼロッテならできる。この地下遺跡には、フェアゲングを形作る複雑な魔法陣の設計図があるんじゃ。あの娘の頭脳ならあれを読み解くことができるはず

アネーロ:でも、ただあの子を招き入れただけでは、他の魔族に気づかれる可能性があった

オーガスト:そのための自作自演の今回の事件というわけか

アネーロ:そのとおり。本当はあなたがここに来ると話がややこしくなるから、隣の部屋で寝ていてもらうつもりだったんだけど……

パルサーモ大公妃:おしゃべりはここまでじゃ。やつらがここに気づいたようじゃぞ

 

その時、リーゼロッテが叫んだ

 

リーゼロッテ:わかったわ! 起動時の魔法陣のここを欠けさせれば、フェアゲングを崩壊させることができる

アネーロ:よし、じゃあ、最後の仕上げね

 

パルサーモ大公妃が真実の魔眼を掲げ、巨大な光が周辺を包む。
石像の表面に無数の魔法陣が浮かび上がり、緻密な文様が石像に生命を与えていく。

 

リーゼロッテ:今よアネーロ。あの右胸に浮かんだ魔法陣のS型の文字を撃って

アネーロ:まかせて!

 

アネーロの放つ弾丸が巨像に命中。少しの沈黙の後、巨大な地響きが鳴り始める。 

それと同時に、広間の入り口から大量の魔族が駆け込んできた

 

オーガスト:石像が動き始めたぞ

リーゼロッテ:生命を取り戻した石像が崩壊しながら立ち上がろうとしている

アローネ:石像に連動してこの地下空間自体が崩壊を始めているわ

 

パルサーモ大公妃:ここは私にまかせて、お前たちは、広間の奥にある柱の裏の階段から外に逃げるのじゃ

アネーロ:だめよ、大公妃!

 

大公妃に駆け寄ろうとするアネーロの上に、フェアゲングの巨大な拳が降ってくる

 

オーガスト:アネーロ。危ない!

 

フェアゲングの腕が広間を分断する。崩れた天井の向こう側からパルサーモ大公妃の声が聞こえる

 

パルサーモ大公妃:さらばじゃ、アネーロ。私と大公が分かり合えたように、きっとお前達なら争うだけでない未来を築くことができるはずじゃ

 

 

エピローグ

地下の大空間が崩れたことで、パルサーモ大公妃の瀟洒な屋敷は地盤ごと崩壊。

その跡地には何度も捜索隊が送られたが、大公妃はおろか、その遺体も発見することはできなかった。

 

オーガスト:怪盗バーゼルが盗んだ真実の魔眼を使って古代兵器を起動。それを命をかけて阻止したパルサーモ大公妃と名探偵達……か

 

オーガストが新聞から目を上げてつぶやく。

 

リーゼロッテ:結局、魔族憎しのいつものストーリーに収まってしまうことが、なんだか割り切れませんね

アネーロ:まあ、聖騎士団が作った外向けの話なんてそんなもんでしょうね

リーゼロッテ:そういえば、オーガストさん、一つ私にわからないことがあるんですけど……

オーガスト:なんだ?

リーゼロッテ:オーガストさんは、地下の別室で私に化けたマモノを正体を見破ったんですよね。なんでそれが偽物だってわかったんですか?

オーガスト:そりゃあ、なんというか、本物のリーゼロッテちゃんの胸はあんなに……

リーゼロッテ:む、む……胸ですか!?

オーガスト:声が大きいよ

リーゼロッテ:私が魔法陣を読み解いている間、オーガストさんは私のニセモノの胸と一体何をしてたっていうんですか?!

オーガスト:ちょっと、落ち着いて、リーゼロッテちゃん

リーゼロッテ:オーガストさんのバカ! ヘンタイ!! 女ったらし!!!

 

パッチーン!!
リーゼロッテの放つ平手打ちの爽快な音が王都の街角に響きわたる
(FIN)

 

 

セブンズストーリー
セブンズストーリー
開発元:WithEntertainment,Inc.
無料
posted withアプリーチ