チュリエとシルヴィアとセプティム
プロローグ
村で休日をとるアルフ一行。
酒場では昼間からシルヴィアとチュリエが呑んだくれていた。
シルヴィア:珍しく飲むね〜、チュリエ
チュリエ:これが飲まずにやっていられますか。私の作った服が、あんなに簡単に燃えちゃうなんて……
シルヴィア:まだ気にしてたんだ。まあ飲みなよ〜
チュリエが作ったシルヴィアの服は、ボルケーノアックスの熱量に耐えられず、灰になったのだった。
(→前回のお話はこちら)
チュリエ:っていうか、シルヴィアさんのその服、一体なんなんですか!?
シルヴィア:これ? 動きやすくていいよ〜
チュリエ:いや、そういうことじゃないくて……
シルヴィア:今度、セプティムにも勧めてみようかなー
チュリエ:セプティムさんに?
シルヴィア:あいつもイフリートとか召喚するだろ。あんなひらひらした服で大丈夫なのか前から気になってたんだよ
その瞬間、チュリエの目が怪しく光った。
チュリエ:シルヴィアさん。それいいかもしれない!
シルヴィア:そうだろ!
チュリエ:シルヴィアさんの服を着たセプティムさん!
シルヴィア:絶対似合うと思うんだよな〜
呑んだくれの二人の暴走が始まる
セプティムの新衣装
チュリエは酒場で道具を取り出すと、その場で作業に取り掛かった。
シルヴィア:仕事がはやいね、チュリエ
チュリエ:シルヴィアさんの服は私なりに研究していたので、材料はそろっていますよ
シルヴィア:サイズとか大丈夫なの?
チュリエ:前にウサギの着ぐるみを作ったときに、セプティムさんの体は採寸済みです
チュリエがあっという間に服を縫い上げる
チュリエ:完成しました!
シルヴィア:すげえな
そこに現れる召喚師。
セプティム:シルヴィアさん、チュリエさん、ここにいたんですか?
シルヴィア:セプティム、ちょうどいいところに来たね〜
チュリエ:シルヴィアさんの新しい衣装を作ったんですよ!
セプティム:ええ!? 私にですか!?
チュリエに促され、更衣室で着替えたセプティムが酒場に戻ってきた。
シルヴィア:いいねえ。似合ってるよ
チュリエ:シルヴィアさんの衣装のシンプルなデザインはそのままに、セプティムさんのイメージにあわせて、色を紫に染めてみました
セプティム:新しい服を作ってくれたのはありがたいんですけど……、この服、ちょっと大胆すぎませんか??
セプティムの白い肌の身体の胸と腰回りを紫の革がわずかに覆っている。手首と太ももには薄紫色の二本のベルト。そしてモコモコした毛皮を紫に染めたブーツと首輪。
セプティム:これって、もっと胸の大きな人が着るやつじゃないかと……
シルヴィア:いや、セプティムも、こうして見るとなかなか
チュリエ:セプティムさんはいつも胸が目立たない服を来ているので、今回はちょっと大胆に強調してみました
セプティム:それに後ろのほう、おしりが見えちゃっていませんか?
チュリエ:あー、セプティムさんは、ワウ族と違って尻尾がないから、ちょっとおしりの上のほうの谷間が……
シルヴィア:セクシーでかっこいいんじゃねえか?
チュリエ:たしかにワイルド感があっていいですね
シルヴィア:武器はムチとか似合いそうだね
セプティム:え…えーっと……
そこに慌てた様子の村人が飛び込んできた。
村人:大変だ。村の西側にスライムが出たぞ! 大群でこの村に向かってくる
シルヴィア:なんだって! チュリエ、セプティム! いくよ!
セプティム:私この格好でいくんですか!!?
シルヴィア:何いってんだよ、急がないと村の人が!
先に飛び出したシルヴィアたちを追い、セプティムも杖を抱えて走り出す。
モンスターとの戦い
村はずれにつくと、アルフとファルメア達がスライムの群れに応戦していた。
アルフ:シルヴィアさん、来てくれたんですね。それにセプティムさんも! あれ……セプティムさん!?
ファルメア:なんなの、その格好!?
セプティムの服装を見た、アルフの目が丸くなる
セプティム:アルフさんはこっちを見ないください!
アルフ:わ、わかりました
真っ赤になったアルフが顔をそむける。
応戦するアルフたちの正面から、大量の紫色のスライムが襲いかかる。
ファルメア:紫スライムがくるわ。セプティム、幻晶獣を!
セプティム:お願い、デュオーノさん、力を貸して……
光の幻晶獣が飛来し、マモノを薙ぎ払う。
デュオーノ:召喚師がそんな際どい服装を着るようになるとは……。嘆かわしいな
全員:(セプティムがデュオーノさんに怒られている!)
デュオーノ:私はまだお前を認めたわけではないからな
続いて、右側から大量の水色のスライムが現れる
アルフ:セプティムさん、お願いします!(後ろを振り返らないように気をつけながらながら叫ぶ)
セプティム:わかりました! お願い、タイタン。力を貸して……
森の巨人がマモノの群れにのしかかり、押しつぶす。
タイタン:(セプティムを振り返り、右の拳を突き出して親指を立てる)
全員:(タイタンはセプティムの服が気に入ったらしい!!)
タイタン:(満面の笑みを浮かべながら消え去る)
今度は、左側から大量の赤色のスライムが……
セプティム:お願い、ベスティラ。力を貸して……
氷の女王の一撃が魔物たちを一掃する。
ベスティラ:…………。寒くない?
セプティム:寒いです……
全員:(セプティムがベスティラさんに気遣われている!)
残されたスライムたちも森に逃げ帰っていった。
アルフ:なんとか勝ちましたね
ファルメア:セプティム、大丈夫!?
セプティム:私は大丈夫です……。もっともっと強くならないと……
セプティムはそう言うと、両手で顔を覆いながら走り去っていった。
エピローグ
再び、村の酒場。
シルヴィア:よっ。アルフ。こっちで、お姉さんと一緒に飲まないかい?
アルフ:シルヴィアさん、まだ飲んでたんですか。セプティムさんとチュリエさんはどうしたんですか?
シルヴィア:チュリエはそこの床で寝ちゃってるよ。セプティムは、なんだかショックを受けたみたいで、今日は早めに休むって
チュリエ:(床に突っ伏しながら呻く)私の自信作だったのにー
アルフ:ああ、あれはお二人の仕業だったんですね
シルヴィア:セプティムにはなんだか悪いことをしちまったようだよ……
アルフ:ちょっとびっくりしましたけど、とても似合っていましたよ
シルヴィア:あんなに真っ赤な顔をして動揺していたくせに?
アルフ:あれは急に新しい衣装で現れたので、驚いたというか、なんというか……
シルヴィア:女の子として意識しちゃったんだな
アルフ:なんでそんなこと言うんですか
シルヴィア:あーあ。目の前に同じ格好をした女子がいるってのに、アルフは私のことは女の子として意識してくれていないのかな?
アルフ:ご、ごめんなさい。そんなつもりは……
シルヴィア:冗談だよ。じゃあ、私も今日は早めに休もうかな?
シルヴィアはそう言って立ち上がり、リンゴを一つとりだしてテーブルに置いた。
シルヴィア:これあげるよ
アルフ:リンゴですか?
シルヴィア:もっと食べてみたくなったら、お姉さんに声をかけてよね、少年!
アルフ:少年はやめてくださいよ……
シルヴィア:あはは。おやすみ、アルフ
酒場の明かりに妙に艶やかな赤いリンゴが照らし出され、アルフの目にはそれが今日のセプティムの姿に重なって見える
ラビィ:な〜に、一人でリンゴを見ながらニヤついてんだよ、アルフ!
アルフ:えっ。なんでもないよ
ラビィ:なんかヤラシイこと考えてただろ〜
アルフ:そんなことない
ラビィ:いーや、絶対にエッチなこと考えている顔だった!
酒場に炊かれた炎が大きく揺れて、巨大な影を映し出す
イフリート:(セプティムよ。なぜ今日に限ってワシを呼び出してくれなかったのだ!)
(FIN)