セブスト Fan Fun Festa

スマホゲーム「セブンズストーリー」とその運営への愛がみなぎる二次創作ショートストーリー

盾のアルフくんの成り上がり

プロローグ

 王都近くの森に遠足に出かけているアルフ一行。アルフが周囲を探索していると、転んでおにぎりを落としてしまう。

 

アルフ:あ、待って!

 

 勢いよく転がっていくおにぎりを、アルフが追いかける。地面に空いた穴に向かうおにぎりにアルフが手を伸ばした瞬間、異変が起こる。

 

セプティム:アルフさん、危ない!

 

 穴のあった周辺の空間が黒く歪み、渦のようなものが出現する。アルフは立ち止まろうとするが間に合わず、渦に巻き込まれる

 

セプティム:アルフさーん!!

 

 セプティムの叫びもむなしく、渦はアルフを飲み込んだ瞬間に消滅し、元の空間に戻る。その後には、アルフの剣だけが残されていた。



召喚一日目

 アルフは気がつくと、他の3人の男達とともに、石造りの建物の中で祭壇のようなところに立っていた。その周囲でローブをまとった人々が口々に叫んでいる。

 

神官1:おお、召喚が成功したぞ

神官2:勇者様、この国、メルロマルクをお救いください!

アルフ:勇者!? 僕がですか!?

 

 神官達はアルフたち4人がこの世界を救うために召喚された「四聖勇者」と呼ばれる存在であること、そしてこの世界が存亡の危機に立たされていることを説明する。

 用意された一室に集まった勇者達は、自分たちがそれぞれ異世界からやってきたことを知り、情報交換を始める。

 

槍の勇者;じゃあ、自分たちが何という国から来たか、一斉に言うぞ!

弓の勇者:そうですね

全員:せーの!

剣の勇者:日本!

槍の勇者:日本!

弓の勇者:日本!

アルフ:ルーツ王国!

剣・弓・槍:(なんか、もともと異世界にいた人が混ざってる!?)

 

 勇者達は、自分たちが微妙に違う世界からやってきたことに気づき始める。

 

剣の勇者:じゃあ、次は一般常識の問題だ! 今の首相の名前は言えるよな

全員:(みんな頷く)

全員:せーの

剣の勇者:湯田正人!

槍の勇者:谷和原剛太郎!

弓の勇者:小高縁一!

アルフ:アンドリュー王!

剣・弓・槍:(明らかに日本人じゃない!!)

 

 話題はこの世界に自分たちがどうやって来たかという話に。

 

剣の勇者:下校途中に殺人事件に遭遇して、幼馴染を助けたところまでは覚えているんだが……

槍の勇者:オレは二股かけてた女の子にナイフで……

弓の勇者:僕は塾の帰りに横断歩道で待っているとダンプカーが……

アルフ:僕は遠足の途中で、落ちたおにぎりを追いかけていたら……

剣・弓・槍:(遠足でおにぎり……??)

 

 アルフのエピソードに、気の毒な空気がただよう。

 

弓の勇者:でも、あの人、盾だし……

槍の勇者:やっぱ……そう?

剣の勇者:ああ……

アルフ:その反応はなんなんですか!?

 

 勇者達は自分の世界に存在した、剣・槍・弓・盾の4つの武器種が存在するゲームにおける盾の扱いを説明する。

 

剣の勇者:オレの世界にあったVRMMOでは、盾職は残念ながら最弱だったな

弓の勇者:僕の世界のコンシューマゲームでも、盾は高レベルユーザは全然居ない、負け組職業でしたね

槍の勇者:俺の世界のネトゲーでも、盾だけはどうにもなあ

アルフ:そうなんですね……。まあ、僕は前の世界で冒険者になってから、ずっとこの盾を持って戦ってきたので、慣れていてよかったですよ

剣・弓・槍:(ゲームじゃなくて本職の人!?)

 

 

召喚二日目

 召喚二日目。王の謁見の間に呼び出された勇者達。

 

王:では皆のもの。己がステータスを確認してもらいたい。視界の端にあるアイコンに意識を集中するのじゃ

 

 王の言葉に戸惑いながらも、勇者達は自分のステータスを確認する

 

剣の勇者:レベルは1だな

弓の勇者:同じく。レベル1です

槍の勇者:オレもだ

アルフ:レベル110って書いていますね

剣・弓・槍:(110だと!!)

 

 謁見の間には4人の勇者の他に冒険者が集められている。

 

王:さて、ここに勇者と同行したいという者が集っておる。さあ、未来の英雄たちよ。仕えたい勇者とともに旅立つのじゃ

 

 12人いる冒険者が選んだのは、剣の勇者5人、槍の勇者4人、弓の勇者3人、盾の勇者ゼロという結果に。

 

アルフ:仕方ありません。この世界で、盾は人気がないようですし……

剣の勇者:そんなことを言って、お前は盾職一人だけで大丈夫なのか?

アルフ:前の世界で僕が相棒と始めた冒険者パーティは、たくさんの仲間が加わって大所帯になっていたので、たまには一人もいいかなって……

弓の勇者:何人ぐらいの人でパーティを組んでいたんですか?

アルフ:180人ぐらいですね。人が多いとなにかと気を使うことも多いんですよ

剣・弓・槍:(180人って、どこの軍隊ですか……)

 

 そこに一人の冒険者が申し出る。

 

マイン:私は盾の勇者様のパーティに入ってあげてもいいですよ

アルフ:ありがとうございます

マイン:よろしくお願いしますね

アルフ:こちらこそよろしくお願いします

マイン:(なんだか頼りないわね。でも、騙しやすそうな人w)

 

 アルフとマインは城を出て、装備を整えるために武器屋を訪れる。

 

マイン:盾の勇者様は武器はお持ちじゃないんですね

アルフ:剣は前の世界に落として来てしまったようなんです

マイン:じゃあ、この剣なんてどうかしら?

 

 アルフが剣を手に取ろうとすると、バチッという音がして指先から弾かれる。

 

武器者の主人:なんだあ!?

アルフ:ええっと、勇者は専用武器以外装備禁止って出てきますね……

マイン:(ほら、伝承の通り。盾は自分では武器を装備出来ず、攻撃も出来ない役立たずだわ)

アルフ;これは困りましたね。

武器屋の主人:武器が装備できねえって、一体どうするんだよ

アルフ:まあ仕方ありません。このまま冒険に出かけることにしましょう

 

 アルフ達は城門を抜けて街外れに出る。広大な平原の中で各勇者がオレンジのモンスターを相手にレベル上げをしている。

 

マイン:では、勇者様。あそこにいるのはオレンジバルーンです。とても弱いモンスターですが、好戦的ですのでお気をつけください

アルフ:剣が使えないのは不便ですね

マイン:(ふふふ。この勇者は武器も仕えず、一体どうするつもりかしら。まさか素手で殴りつけるとかね)

アルフ:確かイェルタさんがこんな感じで戦っていたような……

 

 アルフが盾を大きく振りかぶってモンスターを殴りつけると、バルーンは簡単に破裂する

 

マイン:(盾で殴るですって!?)

 

 アルフは盾で殴りつけ、次々とバルーンを撃破。盾を使って他のどの勇者よりも効率よくモンスターを倒していく様に、周囲が騒然となる。

 

アルフ:あはは、慣れてくると楽しいですね!

マイン:(じゅ、順応性の高い子ね……)

アルフ:シールドフォールブレイク!!

 

 アルフはそう叫ぶと盾を抱えて大きく飛び上がり、周囲のオレンジバルーンを一網打尽にする。

 

剣・弓・槍:(なんか、必殺技みたいなやつまでマスターしているんですけど……)

アルフ:でも、いくら敵を倒しても経験値が入らないんですよね

剣・弓・槍:(レベル、やっぱりカンストしている!?)

 

 

召喚三日目

 翌朝、マインの罠により、王都の兵士たちに捕らえられたアルフ。アルフは所持金の全てと昨日購入した鎧を奪われた上、マインの寝込みを襲って乱暴しようとしたという嫌疑を掛けられたのだ。

 王城の謁見の間にアルフは引き立てられ、他の3人の勇者、国王、マインが一堂に介している。

 

アルフ:マインさん、これは一体どういうことなんですか?

 

 マインは槍の勇者の後ろに隠れ、わざとらしい様子でアルフを睨みつけている

 

マイン:う、ううっ。昨日、盾の勇者様がお酒に酔った勢いで突然私に襲いかかってきて……

アルフ:まさかそんな……

槍の勇者:見損なったぞ、アルフ!

剣・弓:(いやー、どう考えてもマインの主張は無理があるだろう……)

 

 剣と弓の勇者は、痛々しいものを見るような目をマインと槍の勇者に向ける。

 

アルフ:僕は昨日晩御飯を食べた後、部屋で寝ていただけですよ

国王:おぬしは、我が娘が嘘をついているというのか!?

槍の勇者:そうだそうだ。こんなかわいい娘がウソを付くはずがない

剣・弓:(これは父娘そろってダメなパターンだ……)

 

 王はアルフの主張に一切聞く耳を持たず、一方的に断罪した上で宣言する。

 

国王:今のところ、盾の勇者の代わりはいないので、牢に入れることはない。だが……既にお前の罪は国民に知れ渡っている。それが罰だ。即刻立ち去るがいい

剣・弓:(うわー、この王の配下になる国民が気の毒すぎる……)

 

 アルフは小さいため息をつく。

 

アルフ;仕方ありません。

剣の勇者:アルフ、このままでいいのか?!

アルフ:構いません。そのうち誤解も解けるでしょう

弓の勇者:でも、あなたの名誉が……

アルフ:前の世界では、王を殺したという疑いを掛けられて、地下牢に放り込まれましたからね。それに比べればこれぐらい、どうってことないですよ

剣・弓:(この人、どんな修羅場をくぐってきているんですか!?)

 

 

エピローグ

 一ヶ月後。メルロマルク王国を波が襲う。それぞれに修練を重ねた勇者たちが一同に会して波に立ち向かおうと準備を進めている。

 

剣の勇者:そういえばアルフはどうしたんだ?

槍の勇者:あんな非道な輩は来なくていいだろう

弓の勇者:まだそんなこと言っているんですか?

 

 その時、3人の近くの空間が光り、アルフが転移してくる。

 

アルフ:皆さん、遅くなってすみません。同行者設定で仲間を転送させるのに時間がかかってしまって……

 

 アルフに続いて、大量の光が出現し冒険者が現れる。その数、百以上。

 

ラフタリア:アルフ様。ご指示を!

槍の勇者:な、なんだあ、この数は??

弓の勇者:知らないんですか? アルフは王都の奴隷を解放して亜人達の傭兵団を結成したんですよ

アルフ:僕は何もしてないですよ。ラフタリアさん達が頑張って、女王陛下に動いていただいただけで……

 

 続いてフィロリアルに乗った大量の騎士団兵士が現れる。

 

フィーロ:ご主人さま!

騎士団員その1:アルフ様、フィロリアル騎兵団の第1軍と第2軍は既に配置についております

騎士団員その2:いつでも突撃のご命令を!

 

 陣形を整えた2個大隊が整然と並ぶ。

 

槍の勇者:今度は一体なんだ!?

剣の勇者:知らないのか? アルフは騎士団の新たな戦力としてフィルリアルを騎馬として使った軍団を結成し、今やメルロマルクの騎士団の半分はアルフの指示で動くとされているだぞ

アルフ:僕の指示じゃないですよ。単に騎士団に知り合いが多いだけで

槍の勇者:一ヶ月で一体なにが……

 

 アルフの号令で軍隊が動く。戦いの中心で自ら敵を引き付け、盾で強力な一撃を放つアルフ。

 

弓の勇者:やることが……ありませんね

剣の勇者:ああ……

槍の勇者:一体、なんなんだあ

 

 呆然と戦いを見守る3人の勇者。それは後に「人たらしの盾」としてメルロマルクの歴史に刻まれることになるアルフの初陣であった。

(FIN)

 

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