セブスト Fan Fun Festa

スマホゲーム「セブンズストーリー」とその運営への愛がみなぎる二次創作ショートストーリー

イェルタのスライム出世街道

プロローグ

スライム大量発生事件でイェルタを新しい仲間に加えたアルフ一行。聖騎士が参加し、大きく戦力アップしたパーティには、ある問題が持ち上がっていた

 

ファルメア:アルフくん、ちょっといいかしら

アルフ:どうしたんですか、ファルメアさん?

ファルメア:最近、私達、スライム退治しかしてないわよね……

アルフ:ああ、そのことですね……。イェルタさんは、依頼を受けるときに、スライム討伐を最優先にしますからね…。

ファルメア:そう、来る日も来る日もスライムばかり……

アルフ:僕はちょっと楽しくなってきましたよ。スライムって同じように見えてちょっとずつ違うんですよね。赤青緑のスライムに加えて、セラフスライム、デモンスライム。それにデカいやつもいるんですよ。デカセラフスライム! デカデモンスライム! ああ、スライムってかわいいですよね

ファルメア:(ああ、ダメだわ。すっかりおかしな方向に……)ちょっとアルフくん、しっかりして! 私達にはもっと大きな目的があったはずよ

アルフ:はっ! そうでしたね……

 

そこにどこからともなくメルセデスが現れる

 

メルセデス:私に作戦があるわ

アルフ/ファルメア:メルセデスさん!!

メルセデス:イェルタがスライムにこだわるのは、過去のトラウマにとらわれているせいよ

ファルメア:確か巨大なスライムにのしかかられて一晩を過ごしたとか…

メルセデス:そう。彼女はそれを克服できないでいる

アルフ:一体どうしたらいいんでしょう?

メルセデス;ショック療法よ

アルフ/ファルメア:ショック療法!

メルセデス:トラウマの原因であるスライムと徹底的に向き合わせるのよ

アルフ:でも、これだけ毎日毎日スライムと戦っているのに、全然スライムを克服できていないみたいですよ

メルセデス:ここに私が王国中から厳選した、スライム関連の超高難度クエストがあるわ。これにイェルタを立ち向かわせるのよ

 

<公式によるイェルタ紹介>

 

食べられる?スライム

<伝説のパティシエからの依頼>

王国でNO.1のプリンを作ると言われる私だが、かつて森で出会ったアラモードの香りが忘れられない。普通のアラモードとは違い、チェリーを3つ頭に乗せたあの個体は、他とは比べ物にならない、芳醇かつ甘美な香りを放っていた。私は長年研究を重ね、あの香りを再現すべくプリンの開発を続けてきたが、どうしてもあれを再現することができない。
私が目指す至高のプリンを完成させるため、森に消えたあの一体を捕まえてきてほしい。

ファルメア:なにこの依頼……

メルセデス:王都の南の森で、ごく稀にこの3つのチェリーが乗った、アラモードが現れるらしいわ。

イェルタ:プリンの理想をモンスターに求めるなんて正気の沙汰とは思えないわ

メルセデス:断るのかしら?

イェルタ:まさか。きっとそのパティシエはスライムの邪悪な力で認識を惑わせられたのよ。私がそのアラモードを捕まえて、その勘違いを正してみせるわ

メルセデス:(ふふふ。ただでさえレアなアラモードの中で、このアラモードは伝説と言われるレア中のレアよ。一説によるとクエストを1000回周回しても出なかったとされるレアモンスターを、あなたに捕まえられるかしら)

ファルメア:(スライムを狩りをひたすら周回させて、イェルタがもうスライムを見たくないと言わせるまで続けさせるつもりね。恐ろしい作戦だけれど狙いは的確だわ)

 

王都の南の森、イェルタとイシーヌ、シルヴィアがスライム刈りを続けている

 

イシーヌ:もう3日間、寝てないですよ。なんで私達、延々とスライム刈りにつきあわされているんですか……

イェルタ:普通に森を彷徨うだけでは、あのレア物には出会えないわ。あなたたちの嗅覚が頼りよ

シルヴィア:ワウ族使いが荒すぎるぜ……。お……この香りは! 今まで嗅いだことのないうまそうな匂いだ!

イシーヌ:こっちです、イェルタさん! この香りは今までのアラモードとは別次元ですよ!!

 

睡眠不足から目が血走った3人の冒険者に囲まれた不幸なアラモードは、大きな容器に瓶詰めされ、涙目のまま王都のパティシエのもとに届けられた。
依頼主であるパティシエはそのアラモードの香りをベースに、新たなプリンを開発。
チェリーが3つ乗ったレアなアラモードの見た目そのままの新作プリンは、発見者であるイェルタの盾をモチーフにした皿に盛り付けられた。
「聖騎士が見つけた伝説のプリンアラモード」と名付けられたそのプリンは、その美味しさから王都の話題をさらうことになった。

 

伝説のパティシエ:聖騎士様、ありがとうございました。おかげで最高のプリンができました

イェルタ:本当にスライムをもとに新作プリンを作るとはね。あのアラモード、そんなに美味しいの?

伝説のパティシエ:まさか。アラモードはあくまでも姿と香りでプリンの擬態をしているだけで、食べられませんよ。しかし、あの香りはすごいです。私達人間の発想ではとても思いつくものではありませんでした

イェルタ:スライムでも、人の役に立つことがあるのね……

伝説のパティシエ:偶然の進化で身につけたんでしょうね。自然の力は偉大です

 

調理場には店頭に出される前のプリンが大量に並べられている

 

イェルタ:(まさか、まんじゅうに続いて、プリンまで作られるなんて……)

イェルタ:(確かにとっても甘い香りが食欲をそそるわ)

イェルタ:(趣味が悪い見た目だけど、せっかくだから、ちょっと食べてみようかしら。一つくらいもらってもいいわよね)

 

イェルタがプリンをスプーンですくい、口に含むと、パティシエが叫んだ。

 

伝説のパティシエ:聖騎士様! それはプリンじゃなくて、この前捕まえてきていただいたアラモードです!

イェルタは白目になり、口から泡を吹いて倒れる。


伝説のパティシエ:聖騎士様!!!

 

メルセデス達によって開かれた反省会

 

メルセデス:まさか、あの伝説のアラモードを捕まえてくるなんて、さすが最年少で聖騎士になったイェルタね。

ファルメア:あのプリンが話題になったこともあって、伝説のアラモードを捕まえた功績により、イェルタは王宮で叙勲されたらしいわね。

メルセデス:さすがとしか言いようがないわね。しかし、最後にあんな事件が起こるとは……

アルフ:イェルタさん、あれ以来、プリンは決して食べようとしませんよ。

ファルメア:残念ながら、スライム嫌いが克服されたとは思えないわね

メルセデス:しょうがない。次の依頼に行くわよ

 

ヨコシマ?なスライム

<とある辺境の領主からの依頼>
私の領地にある館に、スライムが大量に出現したため討伐してきてほしい。なお、応募は女性冒険者に限る。

イェルタ:簡単そうな依頼ね。

メルセデス:そうでもないわ。この依頼は、王都のギルドで長年解決されずに残っているのよね。挑んだのは何人もいたらしいのだけど、誰も依頼を達成できていないらしいわ

イェルタ:そこで私の出番というわけね

メルセデス:(出来ればこの依頼は使いたくなかったわ。ちょっと荒療治になるけれど、スライムの依頼はこりごりだと言ってくれるはずよ)

ファルメア:(女性冒険者に限る……? 嫌な予感がするわ)

 

依頼のあった館を訪れたイェルタ、チュリエとマチルダ。人里を離れ、鬱蒼とした森辺にぽつんと立っている館は、昔は貴族の別荘であったのか瀟洒な作りだが、今ではすっかり荒れ果てている。

 

イェルタ:気をつけて、マチルダ! スライムがスキルを使おうとしている

チルダ:スライムのスキルなんて大したことないわ。私にまかせて!

 

水スライムが口から水流を放つ。
チルダは、レイピアでそれを受け流すが……

 

チュリエ:マチルダさん!服が!

チルダ:なによ。この液体……、服が溶けてる??

チュリエ:キャー。私にもかかった。お気に入りの白いタイツが……

イェルタ:二人とも落ち着いて。私の後ろに下がって!

 

前衛としてスライムの攻撃を盾で受け止めるイェルタ。

しかし、次々と湧いてくるスライムに周囲を囲まれ、とても盾では防ぎ切れない

 

チュリエ:ひぃぃぃ、服が…服がぁ……

チルダ:て、撤退しましょう

イェルタ:私は下がらない! 私はもう二度とスライムに敗れるわけにはいかないのよ!

チュリエ:でもイェルタさんの服も……

イェルタ:私は聖騎士よ。こんなことで負けるわけにはいかない

 

イェルタが巨大な盾を構えてスキルを発動する

 

イェルタ:道を、開けなさい! シールドフォールブレイク!!

 

イェルタが繰り出した強力な一撃は、周囲のスライムを一掃するとともに、館の壁を吹き飛ばす。すると、何もなかったはずの壁の向こう隠し部屋が現れた。

 

イェルタ:そこにいるのは誰!?

領主:あわわわわ

チルダ:あなたは前に会ったことがあるわ。この土地の領主ね

イェルタ:この討伐の依頼主がなんでこんなところに?

領主:ちょ、ちょっと、心配になってな……。ここで隠れて見ておったのだ……

 

イェルタは盾を振り上げると、領主の脇の机を一撃で粉砕した。

 

恐怖に凍りついた表情の領主に、イェルタが告げる。

 

イェルタ:ふざけないでください、領主様。あなたが仕組んだんですね

チュリエ:(イェルタさんカッコいい!)

チルダ:(でも、いろいろ見えちゃっているわよ……)

 

その事件は、王国で大きな話題になった。
イェルタにより領主のヨコシマな企みが明らかになったことをきっかけに、様々な不正が暴かれ、領主はその身分を剥奪された。

 

イェルタ:(あの館のスライム達は、領主によって服を溶かすように改造された魔法生物だったのよね)

イェルタ:(そう考えると、あのスライムたちも被害者だわ)

イェルタ:(スライムが悪いんじゃない。それを悪用する人間のほうが……)

チュリエ:イェルタさん!

イェルタ:どうしたの?チュリエ

チュリエ:私達の活躍が、王都でお芝居になっていますよ! この雑誌で特集されています

イェルタ:なになに……。聖騎士乙女の肌を濡らすスライム……。巨大な盾の影にのぞくチラリズム! 何よこれ!!!

チュリエ:ちょっとエッチな演出が話題で、連日大賑わいらしいですよ

 

イェルタは真っ赤になって叫ぶ

 

イェルタ:やっぱり、スライムなんて大っ嫌いよー!

 

メルセデス達によって開かれた反省会

 

メルセデス:あの依頼に冒険者達が泣かされてきたのは知っていたけれど、その裏に、こんな変態領主のヨコシマな陰謀があったなんて……

ファルメア:一連の功績を認められたイェルタは、王宮で二度目の叙勲らしいわよ

メルセデス:スライムだけで、聖騎士として実績を重ねるイェルタさんはさすがとした言いようがないわね

アルフ:でも、以前にもましてスライムに憎しみを持つようになったような……

ファルメア:あれは照れ隠しというか、八つ当たりに近いものを感じるけどね……

メルセデス:しょうがいわね。最後の手段を出すわ

 

増えるスライム

<湖畔の村からの依頼>
湖でスライムが大量発生した。スライムが増えすぎて湖なのか、スライムなのかわからなくなっている。とにかくやつらを退治してほしい。 

 

イェルタ:ちょっとわけがわからない依頼ね。

メルセデス:私もこれに関してはよくわからないのよね。とにかく現地は大変なことになっているらしいわ

 

湖畔を訪れたイェルタとワイルドストロゥ、そしてリッカ。彼女達が目にしたのは、大量のスライムが湖を埋め尽くす光景だった。

 

イェルタ:まさか、これほどの状況とは……

村長:ここは美しい湖の景色が有名な別荘地だったんですが、こんなことになり、村には誰も寄り付きません。特に産業も観光資源もないこの村はもう終わりです

イェルタ:私達にまかせて! 

 

(討伐1日目)

イェルタ:さあ、ガンガン討伐していくわよ

ワイルドストロゥ:スライムを一掃して、ここをいちご畑にしてやるぜ

リッカ:わーい。きれいなスライムさんだぁ

 

(討伐3日目)

イェルタ:少しは数が減ってきたかしら。さあ、今日もガンガンいくわよ

ワイルドストロゥ:スライムが多すぎて、だんたんイチゴみたいに見えてきた

リッカ:このスライム達にのっかると、ボールプールみたいで楽しいよ。ほら、村の子たちも、怖くないからおいでよ

 

(討伐5日目)

イェルタ:半分くらいにはなったかしらね。今日もガンガンいくわよ

ワイルドストロゥ:リッカ、今日は何して遊ぶ?

リッカ:今日も村の子ども達が遊びにくるらしいよ。今日もスライムさんに乗ってぷかぷか浮かんで遊ぼう

 

(討伐6日目)

雨が降って、討伐はお休み

 

(討伐7日目)

イェルタ:まさか……。数が元にもどっている……

ワイルドストロゥ:お天気になったし、今日は遊ぼう!

リッカ:そうだね。スライムで何して遊ぼうかなー。

イェルタ:……………。ちょっと二人だけずるいわよ。こうなったら、私も一緒に遊ぶんだから!!

ワイルドストロゥ:いいねー。そうこなくっちゃ!

リッカ:その盾に乗って、スライムの上を滑れば面白いんじゃない!

ワイルドストロウ:俺はこの鎧で滑るぞ。競走だ!

 

(討伐一ヶ月目)

イェルタ:村長さん……すみません。討伐できませんでした……

村長:いや、あなた達が、毎日楽しそうにスライムと遊ぶのを見て、やっと私達も見方を変えることができました

イェルタ:え?

村長:私達は最初、スライムを恐ろしいものだと思っていました。聖騎士様はそんな私達に、別の視点を与えるために毎日あんなことをしてくれていたんですよね

イェルタ:ええっと……

村長:やっと我々も気づきました。この村のスライムは、決して人を襲うことはない、おとなしいスライムです。村の子どもたちも、私達もスライムのことが大好きになりました。私達はスライムとともに生きていこうと思います。これは約束のお礼です

イェルタ:いや、こんなものを受け取るわけには……

 

その後、村は安全なスライムと遊べる一大テーマパークとして整備され、ルーツ王国で最も有名な観光スポットとなった。
中でも人気なのは、イェルタの盾をかたどった乗り物でスライムの上を滑走するスリリングなアトラクションで、「聖騎士の盾サーファン」と名付けられた。

 


メルセデス達によって開かれた反省会

 

ファルメア:これで良かった……のかしら?

メルセデス:きっと良かったのよ。無害なスライムとの共存を選んだ彼女の選択は、きっと転機になるはず

ファルメア:イェルタは、村の課題を解決し、国の一大観光地を作った功績を認められ3度目の叙勲。村の観光大使にも任命されたらしいわね。

メルセデス:聖騎士団の次期団長と噂されているそうね。スライムだけでここまで上り詰めるなんて恐ろしい才能だわ。

アルフ:この一件依頼、イェルタさんはスライム討伐のことを言わなくなりましたね。最近ずっと何かを考え込んでいるみたいですけど……

 

エピローグ

森を一人で歩くイェルタ。そこに巨大な影が現れた。

 

イェルタ:お前はあのとき私が敗れた、巨大スライム……

 

盾をかまえ、スライムをにらみつけるイェルタ。
しかし、イェルタはふっと笑みをこぼすと、構えをほどいた。

 

イェルタ:今はもう、あなたと戦う気持ちにはなれないわ

 

それを聞いた巨大スライムは、うれしそうにプルプルと震えると、イェルタに背中を向けた

 

イェルタ:背中に乗れっていうの???

 

イェルタが背中に上ると、スライムがうれしそうに動き出した。イェルタを背にのせて、森の中でくるくるとまわるスライム。

 

イェルタ:うふふ。楽しかったわ。でもここでお別れね。私もあなたの仲間を沢山倒してきた。あなただってきっとそう。あの村では、たまたまうまくいったけれど、スライムが私達人間にとって、恐ろしいモンスターであることに変わりはないわ。でもいつか人間とスライムが、本当の意味でわかり会える日がくるのかもしれない。

 

スライムはそれを聞くと、寂しそうにプルプル震えると、森の中に消えていった。

 

イェルタ:(なんだか、あのスライムとはまた会えるような気がする)

 

それは後に、王国最初のスライム騎士となるイェルタとその相棒の騎スライム、スラリン(本名スッラ・コルネリウス・リングフィールド)の二度目の出会いだった。

(FIN)

 

 

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